2017年 03月 05日
和声学:調和声
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総合目次


             和声学情報 [2]

               動的な機能性と強調性
                 _ 並進行(連続)8度 _

               理論と論理の可能性
               検証と判断
               原理再生

             凡例


          調和声

             バロックの和声

               J.S.バッハ

             古典派の和声

               W.A.モーツァルト

               L.v.ベートーヴェン




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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:51 | 総合目次 | Comments(0)
2017年 03月 05日
和声学情報 [2] / 和声学:調和声
和声学情報 [2]


 規則禁則は常に普遍であることが確証されたわけではない。それは事象現象の歴史的経緯と生成過程の検証分析を注意深く行なうことによって、実在_バロック・古典派・ロマン派和声_の実体概念と合致しない非歴史的な限定、という規則、また原理的に解明できない非実践的な制約という、禁則が、いかに疑わしいものであることはすぐに判ってくるものである。和声学はつねにこの問いを問い続けてきた。もしこの問いに、明確な答えが得られるなら、中世・ルネッサンスから現代にいたる和声的実在を根本的に動かしていたものが何であるかを、理解することができるのである。

動的な機能性と強調性

_ 並進行(連続)8度 _

 だが、果たしてこれまでの和声学はこの規則禁則の克服に成功したのであろうか。現代の研究者はそうは見ない。研究者にとって和声学は、規則禁則の作成者ではあってもその克服者ではないのである。それはどういう意味であろうか。
 「歴史的・実践的実在」と並んで、和声学の理論体系において重要な役割を果たしているのが「表出への創造的想像力」という概念である。この概念は「和声的実在概念の定義」で主軸になるものであった。研究者の見解によれば、実在の全体の「根本性格」は「表出への創造的想像力」である。つまり、実在の全体は、つねに現にある表出よりも、より自然により自由になろうと生成しているわけである。では、その生成はどこにゆきつくのであろうか。もはや規則禁則的な目標にではありえない。とすれば、「和声とは"何"かを問う」の意味はどのようなことになるのか。その概念化が「事実の認識」から生起し、「検証・分析・総合」という定義契機が密接に連動している「本来的概念性」を場にしておこなわれる概念の定義、そこで定義される実在の意味が「生成」であることは容易に推測できる。それは、すべての現象を現象として成り立たせている、その「現象」とはどういうものかを問うことである。もっと分かりやすくいえば、「和声として存在するあらゆるもの」、つまり「和声とされるあらゆるもの」を、そのように「和声」として成り立たせている「実在」とはどういうものかを問うことである。だが、この問いが根本の問いだという実証和声学の主張は果たして本当なのであろうか。たとえば、和声の世界のなかで、バロック_モンテヴェルディやJ.S.バッハの和声にみられる「並進行(連続)5度」のように、根源的現象に由来する「並進行(連続)8度および1度」の現象は、古典音楽の表出において_有効な構成技法、しかも、始原の存在、そしてより自然な構造様式、つまり和声空間を象徴する_多目的な機能システム_であることが、現存在として認められている_西洋古典和声の検証_によって明らかにされている。その現象は疑いもなく存在するのである。

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        この最終楽章には、「並進行(連続)8度の和声現象」が頻繁に現れる。

                ・ 第 50 小節 〜 53 小節
                ・   101    〜 102   
                ・   210    〜 211   
                ・   227    〜 228   
                ・   261    〜 262   
                ・   319    〜 320   
                ・   399    〜 402   


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 「並進行(連続)8度」は、並進行(連続)5度と同様、作曲家の誰もが享有する「職人的良心」の賜物である。一般的な和声学における調和声解析のための対象となる実体のある相手、すなわち、並進行(連続)を取り込む創造者たちが志向した平行構造に対して、禁則という概念規定あるいはその内容の更新といって括弧付きの条件を貼りつけることはできない。なぜなら、実体的概念と実践的連関から引き離された前時代的な学習者たちがそれを原則と信じていたとしても、象徴事実とは限らないからである。要するに、音楽文化社会に現存する和声を理解できるのは、それがもつ動的な機能性と強調性ゆえである。人間の素質や能力を生き生きと活動させる音楽性と聴感覚をもって、古典音楽の領野に和声現象となって立ちあらわれる必然的な"並進行(連続)"を聴きさえすればすぐにも納得できる響きなのである(site:exblog.jp 和声学序説_古典和声の検証分析)。
 和声学において「並進行(連続)8度を禁則とする理論が以前からうまくいかなくなっている」と人々は批判した。つまり、事実を隠蔽排除した資料に照らし合わせる概念規定(論議)では、現実的で有効な実践的実在は徹底して否定され禁則(誤り)となる。かつては和声の全体を見落としたのかもしれないと善意に考える一方で、「理論構成」にとって都合が悪いデータだからわざと考慮に入れなかったのでは、とも疑っていた。その基本的基準をみる限り、熟知された事象現象の究明が脇におかれ規則主義者が自分の描く構図にこだわったことが判ってしまったのである。そうした構図に合わない事象現象を邪魔なもの(不正)として除去する考えは、対象を概念的に規定する禁則の内容とも一致する。技術的分野で、検証を拒絶する限定と制約は基礎論における専門知識となるものではなく、限定制約だけしか問題にしえない演習上の単なる便宜的な手段であるにすぎない、という背後的知識は、それゆえ多様における統一を本質とする世界観を見失いその学習過程でボトル・ネックとなる。古典和声としての事実を認めず、事実と食い違う、いわば特定対象の部分に内在する局所現象に引き下ろす原則(ルール規定)の病理はあまりにも根深い。
 その禁則の規定は、公理定理の疑問を投げかける認識者がいつもこぼすように、一方では優柔不断で観念的であり、他方では極端に愚直で独断的である。当然明白な歴史的実在への無関心に加え、実践によって合理的にまとめられた可能性をも無視する。つまり、基本的前提を意味する公理定理で構成された概念の規定でありながら、一般的な和声学に現われる他の命題を、公理的方法から与えられた一定の規則に従って証明することができない。規定の説明をするにしてもすぐ論理はばらばらになリ、ともすれば野卑になる。規則禁則に関する正誤判断というものは、すべてそれ自身において、またそれ自身にとって音楽そのものとは無縁のものである、そのために、一般原理の発見という目的を自ら果たそうとせず、それとは反対の譜例が示され規則禁則の疑義を指摘されると、決まって分析資料の論議から逃避する弁明を繰り返している。しかし、音楽に関わる感性豊かな青少年たちは、現に与えられている和声学的環境のうちにありながらも、かつて与えられたことのある音楽環境や、知り得る可能な和声学情報を重ね合わせ、それらを相互に切り換え、そうした次元へ関わることによって、事実を事実として受けとることができるようになった。むろん機能和声論の本筋から逸れてしまう機能離脱_という実在性排除の事態だけでなく、一般的な知識の大部分であるきわめて蓋然性が高い概念が、理由もなく正反対の規則違反となる現存在喪失の不確かな説明に対して冷静である。
 認識の根拠づけにおいて、自明である和声の事実そのものが和声学を望ましくないものにするのではない。理論体系のなかで、検証および分析不十分な限定制約の概念規定が、矛盾する命題が演繹されない無矛盾性が要請される、つまり他の命題の演繹の基礎となる基本的前提を意味する公理となるからである。「元の対象と合致しない公理的概念」は、認識の固定化と均質化を引き起こし、古典和声のただなかで、すでに存在している芸術家のような創造的想像力への存在認識を諦めさせ、多様な実践および美的選択の幅を狭めるのである。学習者たちは、実は音楽的に関心のないものを聴くよう強いられる。彼等はそれに興味をもつようあらかじめシステムのなかに組み込まれており、概念形成における抽象にはそれに代わるものがない。とすれば、私たちの批判は単純に仮説が上から教え込まれていることを指摘しているのではない。和声音楽の伝統性およびその想像力と感覚をさておいて、公理的方法にこだわる短絡的な思考が、常に実在性を排除する禁則を押しつけてきたからである。なぜなら、そのほんとうの矛盾は、この押しつけに価値がないことなのだ。押しつけられた禁則はその明証性を原理的に表明できる力がない、しかも、禁則は、私たちが生きる音楽文化社会や日常的な思考生活の円滑化を計っている概念とはならないからである。


検証判断

 検証は、対象との直接的な対話によって事象現象の現実的な実体概念を見い出し、その事実の現実性と効用性とを確保しようとするのである。ひとつの構造特性は、当然、事実という基本素材の検証にもとづいて概念化され判断される。このようにして、検証と判断の共同の働きは合理的な経験論に依拠するといえる。現実性と効用性とは、認識の最初にあって判断の材料となるもの、意識に直接与えられているもの、つまり理論が成り立つための条件となっているものである。音楽の世界において現実性と効用性という概念が明らかに存在するものとは、動的な上行志向の構築物_古典和声という実在である。したがって、限定され制約された均質な概念というものは、私たちが音楽文化社会のなかで普通のこととして経験できるものではない。それを考えれば、歴史的実在と人間的能動性をかえりみない判断は、現実的に理解可能な何らの意味をも提供しないということになる。曖昧な概念規定が投げかける問題の解決に対して明確な答えはまだ出ていない。しかし、その答えがどう出るにせよ、和声学の理論体系に変革をもたらすような緊急を要する問題であることに間違いない。何ものにも覆われていない和声の世界は見るからに柔軟で開放的な概念で充たされたものであろう。私たちの必然的な考察から構築される和声学は、可能性が活動する実在についての概念認識の成立と完全に連動している。とするなら、いまや和声学はあらゆる領域でその根本問題にさかのぼり改めて検証し直すことを求められている。
 ところで、公理から矛盾する命題が演繹されるパラドックス_によって、 21 世紀に入ると、今までのローカルな規格ソフトは和音記号も含め、学術的にその立場は支持できないという終焉宣告に見舞われたが、歴史的・実践的実在を基盤とする実証的研究は、和声学が最も理論的であり論理的であり、すでに自然な実体概念の解明に値する学術学であることを再確認しようとした時代の風潮の中から生まれていた。それは古典和声についての構造認識を明らかにするひとつの立場である。なぜなら、公理論が規則禁則をもって基本的な構造認識を要請しているのに、私たちが経験する伝統的な和声構造システムは、実をいえば禁則の要請に合わせてつくられてはいないからである。また、対象へのミッション活動(聴取・分析・保存)を拒否する限局的な概念は、本来的なロゴスと経験的実在に向けられた視点もなく、現代の社会的な文化活動に関わる人々が思考選択しているような概念ではないからである。こういった衝動過多な概念認識を普遍項とする和声学状況がほんとうにあるなら、所詮、禁則は、すべての時代のその本質根拠を思考しながら可能性を遂行した作曲家や演奏家からコンセンサスが得られない愚問となる。バロック、古典派の音楽作品の和声において、すでに現代の実証的研究では多様で多数の事象現象が検証されているにもかかわらず、人間の能動的な思惟・存在・実践を示す顕著な実体概念を禁則と規定してしまう考えがそうである。
 しかし、どのような理論家も次のような点で意見が一致している。まわりくどい言い方だが、いわゆる禁則は、心理的・感覚的に不快で受け入れがたい性質をもつ響きを指していうのであるが、内容的には、個人ごとに相違があって、形式的には、個人差がある。さらには、歴史的にどのような時代にもさまざまな形で合理的な根源的現象として存在していたことが明らかにされている。禁則とはまさに主観的で非歴史的・非実践的な概念である。とはいえ、検証放棄によってつくられた禁則がどれほど事実不一致に陥った規定であるかを、そして、対象という定義契機が綿密に連動している実在分析を否定せざるを得ない事態を、従来の和声学履修者は知らない。


原理再生

 和声学基礎論は、様々な分節化を受けた現象の連係関係から成り立っている。理論の一般性として、基本単位をなす部分現象そのものが直ちにルールとなるわけではない。個々の現象は、それらが属する対象と事象全体の構造によってしか識別することはできないのであり、それら自身はけして内圧的な要求から生み出されたものではなく、正しいという概念の定義を示す意味生成をもっていわけではない。それらは、一つの部分現象であるにすぎない。ところが、相対的な検証メカニズムがもたらす実践的課題と取り組むことも不可能な規則化の流れの中にあると、ひとつの方法に満足するだけで発意性を枯渇させていくのである。対象の構造様式を知るための手段となるものは、概念の形成過程における種々の抽象であって、それは事実の検証や実例のリスティングを基盤にして行われ、対象と他の数々の対象との比較をあらわすものである、ということができる。その概念内容は部分を集めて対象全体を再生させようとするものにほかならない。古典における実践をそのような認識方法で比較検討してみるなら、理論がもつ一般的な和声の原理が明らかになってくる。 
 思い起こしてみよう。グレゴリオ聖歌を主題にするオルガヌム、モンテヴェルディのマドリガル、J.S.バッハの声楽的4声体コラール、モーツァルトの交響曲を調べてみると、和声の表出法は多元的・複合的な構造を有していることが分かる。昔の西洋人のなかには困難を切り開いて、多様な表出のために能力の全てを尽くして想像した作曲家が多くいたのである。そうした活動の意味が結果となってあらわれたのが、古典和声といわれるものである。人々が求めているのは人間の精神的・身体的状況と相対的である人間が確かに創造した和声の世界を、私たちの手に取り戻すことである。
 和声を論述するはずの和声学は、単なる規則禁則の羅列ではそれを実現できないだろう。和声学を学術として充実させる面から、理論と演習の危機的状況を踏まえ、歴史的実在、実践的実在、そこに展開された事象現象が価値ある資源として注意深い合理的な取り扱いを要すると同じように、事実の還元を厳密に確保する検証のあり方をどうしても示す必要がある。開かれた実践的実在に関する実証的研究も同じ考え方から出発している。今日、和声学の対象との関わりにおいて、概念的思考は立ち後れ、対象を直接的に把握するという認識方法を含め事実からの定義志向が弱い。画一的な限定制約という唯一性の概念だけをとらえても、基本的な理論すなわち原理全体はけして動かない。そして検証する現象のあるがままを判断しなければ、概念定義の妥当性を失うことになる。その原理が私たちに語りかけているのは、それを構成している現象が何であるかを検証し、それを総合的に説明できないなら理論と演習の現実性と効用性は存在しない、ということである。和声とは、過去から現在、現在から未来へと進化する歴史的存在であり、人間の思惟と存在とが具現化される実践的存在である。その存在は語りかける力をもっている。しかし、語りかけに値する話し相手がいなければ、それは沈黙したままである。




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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:49 | 和声学情報 [2] | Comments(0)
2017年 03月 05日
凡例 / 和声学:調和声
凡例


和声の変遷



 音組織の歴史的変化/和声の変遷 p.10

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    Direction1) 「教会 12 旋法」から<教会 2 旋法>の集約を経て、「旋法の多様化」にいた
           る歴史的な経緯を把握しよう。

            左ページ、音組織_の項、下方向の ↓

               音組織の数は、
 
                      多 (中世)  
                      ↓
                      少
                      ↓                     
                      多                  
                         に変容する

 
    D2) 3和音と7の和音の和声素材があらわれた時代様式を答えなさい。

            左ページ、音程・和音_の項、下方向の ↓ 上から3番目

    D3) 和声作法の<対照的和声構成法>。

            p.29

                譜例 10.

   
                 ↑ 
               モーツァルトはこの伝統的な対照的和声法によるシステムを
               見つめていたことがその和声法の分析から判る
                 ↓

    [ N.B. ]

            下巻 p.71

                譜例 261. 263. 264. 265.



    Question1) 段落・終止法における終止和音に< 完全3和音 >が用いられるよう
           になったのはいつ頃か?

            右ページ、段落・終止法_の項

    Q2)  中世における音組織「 教会12 旋法 」がそのまま復活するのはいつの時代か?

            右ページ、和声作法_の項

    Q3)  印象派の和音構成法の中で、あなたにとってすでに響きが判っている和音素材
       はどれか?


            左ページ、下方向の↓ 上から4番目_
                 和音構成法の多様化_の中にある4つの和音素材




教会旋法と和声法


    教会旋法と和声法 p.12


    D1)  教会旋法がオルガヌムに始まるポリフォニーとホモフォニーの中でどのように変化し
       ながら生き続けたのか、その過程をたどってみよう。その歴史的・実践的存在は、と
       りわけ古典派和声の一般原理に関わる理論や論理に欠くことのできないものである。


            要点となる事項:

               旋法性

               音階的な概念をこえた特有な表現方法

               トニックとドミナント

               変化音としての変ロ音



    D2) 15行目「各旋法には、... グレゴりオ聖歌の教会調は分類される」を理解しなさい。
    D3)  15 世紀の和声における新しい傾向を認識しなさい。

               フォーブルドン

               旋法和声が頂点を極める 16・17 世紀の和声法

               旋法の2極化

    D4) 2極化の要因となる伝統的な和声法に注目。


               旋法和声を滋養としながら成長する 18 世紀の調和声

               フーガやソナタなどの和声的骨格

    D5) 教会旋法の復活。

               旋法作法

               新しい調概念


    D3)  p.13 には教会旋法と和声法との関係についての概略が実践および理論用語で示して
       ある。



教会旋法の推移

    教会旋法の推移 p.14 〜p.15

    D1) 教会 8 旋法の名称を答えなさい。

            左ページ、教会 12 旋法_の項、Ⅰ〜Ⅷ

    D2) 中世-教会12旋法のtonic と dominant との音程の違いがある。

            左ページ、教会12旋法_の項、Ⅰ〜Ⅻ _における白音符
                / 下方が tonic、上方が dom.


    Q) 印象派の音楽において、以前には存在しなかった旋法があるが、その名称は?

            右ページ、旋法の多様化_の項、下から2番目の旋法



音程・和音表記法

    音程・和音表記法 p.16

    [ N.B. ]

        この事項の詳細な説明は 「和声学:旋法和声」 にある


    音程表記法

    集積音程表記法


    和音表記法 p.17

    和音表記法について

              
          西洋に存在した伝統的な 和音表記法 と 調名 を採用する理由


    a. 通奏低音法


< 和音の転回形について >

 歴史的にみて、旋律的・和音的な和声構造性に対する認識は、なにもバロック・古典派あるいは近代・現代になってようやく始まったものではない。和声の起源以来、いかなる時代のどのような様式の音楽であっても、水平的・垂直的な表出目的と美的感覚は音楽全体を通してつねに意識されるものであった。ルネッサンス時代に見られるすべての実践とその作品は、3和音の響きがもたらす種類上の音響効果_和音の種類変化を、さらに異なる形態上の音響効果_和音の転回形(枠内のカッコに示す)_を表出しようとしている。
 例を挙げれば、 15 世紀の「低音5度下行の導音カデンツ(譜例 33. 〜 36)」では、つねに基本形の和音が用いられたことから、和音形態の変化がすでに認識されていたことが考察される。また、 16 世紀_ 「18 の異なる組合わせとその配置」を用いた G.P.da パレストリーナが、彼の多くの合唱曲において、「転回形という和音形態による響きの違い」を実践したという歴史的事実はよく知られている。ちなみに、通奏低音法に関する文献、そして和音の形態に関する表記法が体系づけられたのは 17・18 世紀以降である。



    b. 和音記号 p.18

          シンボル:

               ローマ数字_大文字と小文字

               °  7°  +  +7

    c. コード・ネーム

    Q) ( )m7 と ( )m7-5 および ( )dim の和音性質の違いは何か?

          次に示した個々の表記を、
          左端枠の 和音の種類 および 和音記号 と照らし合わせる

               ( )m
               ( )m-5
               ( )7
               ( )m7
               ( )m7-5
               ( )dim


    ( d. 音度記号 ) p.19

          ローマ数字の大文字をすべてに用いる表記法

    D1) 音度記号と和音記号の表記法の違いに注目。

    D2) 下巻のトレイニング・プログラムにおいては、属7、短7、導7、減7、そして長7の和
       音を頻繁に扱うので、< 3 方式によるその和音表記法 >をチェックしなさい。



     和音の読み方   p.20

          英式の読み方

    D1) Dm7-5 を英式の読み方(英語名)に注意。

    D2)  Ⅱ Ⅶ゜ 7゜+7 の和音記号を日本語名で読めるようにしよう。


     調名の読み方   p.21

               右枠の 教会調 と 長・短調 の読み方に注意




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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:47 | 凡例 | Comments(0)
2017年 03月 05日
1. 旋法の2極化 / 和声学:調和声
バロック後期の和声
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新旧概念のシステム融合

 J.S.バッハが調和声の世界における最大の作曲家だということについては、ほとんど異論はないであろう。1700年代以来約1世紀半にわたって多方面に及ぼしたその圧倒的な実践力は、いくらバッハの和声を嫌う人たちも認めざるを得ない。ドイツ古典和声の18世紀から19世紀にかけて、つまり18世紀においてはモーツァルト・ベートーヴェンに深く結びついた古典派和声が、そして19 世紀においては古典派和声のさらなる拡張されたものとして登場してきたロマン派和声が、それぞれJ.S.バッハの試みたさまざまな事象現象を和声的可能性の源泉(はじまり)とみなしてきた。
 このバッハの和声の存在は、古典和声における基本的な理論体系を理解する上で重要な意味をもつ。言い換えるとそれは「和声をつくる素質」であり、「可能性を発揮し活動させる能力」といえる。こういう和声的能力、いわゆるものごとを論理的・概念的に思考したりより柔軟な可能性を追求したりする能力の原型は、聴感覚からくられる構造様式を綿密に組み立て、和声の現実性と効用性を判断する概念認識として働くのである。その概念を手がかりに、調和声の特質を考えてみよう。
 序章 _「和声の変遷 p.10」、「教会旋法の推移 p.14 」、「中世・ルネッサンスの和声_概要 p.24 」の各資料からも判るように、そもそも長短両音階は西洋音楽の生成過程における起源的体系ではないのである。それらは起原的で不動の存在ではなく、歴史上において多種多様な音組織的概念のシステム融合によって生成された過渡的概念の一つである。
 ところで、従来の日本の音楽基礎理論は、ごく最近にいたるまで、長・短音階の両音組織が西洋音楽における出発点であると定義していた。しかし、これが単なる仮説でしかなかったことは明らかである。この説明は、一切の歴史性を排除するがゆえに、実践的実在すなわち古典的なものから得られるすべての実体が否定され、閉じられてしまったものとなる。古典派和声様式以前の_中世・ゴシック・ルネッサンス、バロック_モンテヴェルディ・J.S.バッハの創出した構造特性を検証分析すれば、長短音階は音組織の概念におい古典的な基本概念ではなかったのである。単なる長短音階の音組織による和声を切り取り、それを枠組を前提とする理論の和音解釈やルールは普遍といって論述したとしても、それが「古典和声の根幹を説く」ということにはならないのだ。個々の言明はもちろん、規則主義が押しつける観念論や限定・制約そして例外・不可も事実の経験的検証作業によっていつかは偽になるかもしれない。したがって、和声学基礎論情報をめぐる概念認識に、原理的にも、それに始まりそれに起因するという大きな誤りをまねいたといってよい。
 西洋18世紀_調和声の創出基盤の本質は、伝統的な音組織_教会旋法、旋法を集約した音組織_長・短音階と半音階、音程・3和音と7の和音に象徴される各機能を共存させた複合構造である。新旧の要素と技法が互いに関係し合う統一的全体という画期的な実践によって、そこには、音楽文化社会に現われた調的概念の歴史的な経緯、それに対する人間の第一義的な感覚能力(共通感覚)を基盤にして、先行した時代の遺した諸条件の上に歴史を創造していこうとする思惟過程が存在する。


ソースプログラムと音組織

 ソースプログラムとは、元来は起源的な体系のことである。現代の和声学では、様々に異なった要素・現象などの間に、統一的な視点を設け、水平面上にこれをつないで新しい機能を発揮させる場合、その全体的平面をオープンシステムと呼び、そのシステム機能を概念化するためには、各音組織の独自の構造と機能、および各音組織系の関係がどのようなコンテクストを有していたのかを検証する必要がある。その検証において、事実に基づく実証的な認識方法で分析することをシステム分析という。
 音組織には様々なものがある。中世の音楽でいう「オルガヌム」、ルネッサンスやバロックおよび古典派の音楽でいう「フォーブルドン・システム」、「3度構成和音・システム」などは音組織である。音程・集積音程・和音などはそれぞれ形態があり、全体は構造的・機能的に連関し合って一つの統一体として音組織をなしている。そして、時代ごとの歴史的実在や作曲家の実践的実在は、それを構成する個々の諸要素が結合し、全体としてその事象現象との間にバランスを保持して存在している。いずれも「音組織」である。
 今日私たちに伝わっている調和声における最も古い音組織を調べてみると、各教会調が性格を異にする2種の教会調_長旋法(イオニア)と短旋法(エオリア)_に集約され転化する。バロック後期・18 世紀_J.S.バッハの和声構造とはまさにこういった様式特性にほかならない。J.S.バッハが追求した「新旧の音組織(長短音階と旋法)」を自由にあやつるシステム機能、それによって形成される調概念は後期バロック和声を代表する象徴的機能であり、諸音組織に基づく合理的で包括的な結合・分離・融合が和声創出を成功させている。



旋法の2極化


 実証的研究では、伝統的実在の概念化を目指して、旋法和声をはじめとする伝統的実在の定義を、第一資料の分析や総合など様々な角度から行っており、その根源的実在の認識と歴史的変容の考察とを合わせることにより、音組織の生成および集約についてより深く知る試みを行っている。バロック和声の様式特性は、6つの音組織が共存するもの、それらに加え2つの音組織のどちらかに集約されるものが個々に存在する。実践的実在によって多様である。
 さて、調和声の理解に向けて、2つの音組織への集約を目標としたJ.S.バッハのアプローチを検証しよう。


  1. 旋法の2極化 p.304


  (1) 教会6旋法の集約

  教会 6 旋法は、2つの旋法に集約される。導音化、変ロ音化および和音性質変化が・・・

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 p.305

  長音階と短音階の生成過程:

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  リディア旋法 ­­­­­­­­­­­     → 変ロ音化      ↘
  ミクソリディア旋法   → 導音化、和音性質変化 ↗

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  ドリア旋法 ­­­­­­­­­­­     → 変ロ音化      ↘
  フリギア旋法     → 導音化、和音性質変化 ↗
             (導音和音化) *


    Direction1) 上記の事象現象の和音素材を示したものがp.71〜p.73の表となる。

    D2) 教会旋法の推移 p.14 ~p.15 の内容は、「和声学が和声学となるための基となる条件」である。

    D3) 教会旋法と和声法_ p.12、中世・ルネッサンスの和声−概要_p.24 に記載された「和声概念の歴
       史的な経緯」を把握しなさい。

    D4) その歴史的概念、下記の1)~4) の過程を検証分析する。



旋法和声から調和声への歴史的経緯

 古典和声の分析が常に人間の思考によって行われているとなれば、分析はすべて何らかの歴史・文化・実践的事実と関わりをもっている。しかも、それは分析する人間が枠組とする対象によっても方向づけられている。それは私たちが一般的に古典和声と考えているような対象、つまり「音楽の実体と機能性について分析者がもっている考え」そして「その根底に横たわる分析者の調構造に対する歴史観」のことである。


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    教会6旋法の集約経緯についての考察:

    Question) 1) → 4) の順に従った過程で、旋法和声が調和声の方向にシフト
          されていくプロセスが分かるだろうか?

       

          G dorian : ▶ G aeolian : ▶ G minor
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 譜例に示された [ (a) → A_教会旋法の集約. (b)→ B_経過導音和音. (c)→ C_変ロ音化. (d)→ D_段落・終止法] の歴史的な変化発展の過程は、和声の理論体系に関わる構造認識の、あるいは和声学の専門知識のイロハを意味するものにほかならない。こうしたバロック時代の作曲家が構築した「和声構造(前提的諸条件)」の上に、古典派・ロマン派の「より柔軟な和声構造」が創造されてゆくのである。



    [ N. B. 1 ]

            「 和声法 - 旋法転移:」
 
               ・教会6旋法とその転移 p.65

            「 和声法 - 原和音と変化和音:」
 
               ・変化音 p.70

            「 和声法 - 導音カデンツとその転移:」

               ・原和音によるカデンツ p.80
               ・導音和音と導音カデンツ p.81
               ・導音カデンツの転移 p.82

            「 和声法 - 段落・終止法:」

               ・和声的傾向 p.93 _ Dorian :
               ・段落: p.94   _ Dorian : 正格終止 転移正格終止
               ・終止:
               ・掛留 p.96

            「 和声法 - 段落・終止法:」

            「 和声法 - 変ロ音化:」 p.109

    [ N. B. 2 ]

          3) 、 4) 」の和声構造は同じ内容である。J.S.バッハは3) のように「転移記
         号_
p.65, p.307 」 を用いることもあるが、上記のコラールは当時の新しい記譜
         法4) に示した調号 _ p.308」を用いて楽譜作成している。



    D4) その観点から、p.335_3) / Act Gott, vom Himmel seih' darain の和
       声を分析しなさい。

            1) 音組織
            2) 変化音
            3) 終止和音
            4) 段落・終止和声の構造特性
            5) カデンツ番号
            
            6) 調


    D5) 譜例_バッハ・コラールの段落・終止和声において「導音が長3度下行す
       る構造特性」をマークしなさい。

    D6) なお、これらの詳しい検証分析は、後出の「8, 旋法和声の継承と変容」の
       <理論演習>において実施する。


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  (2) 全音階と半音階 p.306

  全音階
   a. 長音階
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   b. 短音階

    自然短音階

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    和声短音階

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    旋律短音階

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  半音階

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  p.307

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  音階音の名称


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  (3) 長調と短調 p.307

       長調と短調の音体系が形成される過程は、p.304~305 に説明がある

  (4) 多種の転移記号と調号

       音階転移の起源的ツール:

     a. 転移記号

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         ♭ / 1個の例             2~4個の例    ♯ / 1~2個の例
 
                                    ・
                                    ・


    [ N. B. ]

         ♯ / 3個の例は p.357 譜例 188.

       転移記号システムを基盤にした音階転移のためのツール:
 
     b. 調号 308

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    理論演習 P.309

    D1)  「集約的音組織_長・短旋法」を確認しよう。

    D2) 集約の要因となった現象はどのような和声法によるものなのか、旋法和声
       の伝統的な構造特性に該当する譜例を指摘しながら説明してみる。

         たとえば、p.109 譜例 72. など ......



    演習1

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    演習2 p.310


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    D3)  「伝統的音組織_教会6旋法」に注目。

    演習3

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    鍵盤演習 p.311

    演習



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    和声および旋律短音階_和声短音階は、Dorian においては変ロ音化と導音化、Aeolianにおいては導音化
    という作法的要素が、また、旋律短音階は、Dorian とAeolian の旋律的要素が構成単位の中で隣接して表
    出される音現象である。




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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:46 | 1. 旋法の2極化 / J.S.Bach | Comments(0)
2017年 03月 05日
2. 全音階による原和音 / 和声学:調和声
全音階による原和音



  2. 全音階による原和音 p.312


    a. 3和音

    長音階                      自然短音階
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                       和声短音階
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    旋律短音階

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    [ N. B. ]

       全音階による原和音とは、理論史における一移行期に生成された新しい音組織に関わ
      る和音素材である。つまり、和声・旋律短音階上の臨時記号の付いた和音の属性はその
      調の固有和音である。

          * 音程・和音表記法_(p.16~21)/(http://organum.exblog.jp/i52/) 参照


    主要3和音
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          Major と Minor のそれらを比較すると和音性質は対照的

    [ N. B. ]

       バロック後期_J.S. バッハが創出した和声においては、「伝統的な教会6旋法とその
      概念のシステム融合によって集約された長旋法と短旋法_全音階」を基盤とした各音組
      織上につくられる諸3和音が混在する。


          * 長旋法と短旋法_全音階_(p.69, 72, 305) 参照



    b. 7の和音 p.313

    長音階                       自然短音階
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                       和声短音階
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    旋律短音階

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          属7の和音

             和音表記: ( ローマ数字大文字 ) 7   p.18 参照

          短7の和音

                 : ( ローマ数字小文字 ) 7 


          導7の和音

                 : ( ローマ数字大文字 )゜7 


          長7の和音>

                 : ( ローマ数字大文字 ) +7 

       音組織上の「認識論的な理由」から、「基本導音カデンツ」において、長音階・ 自然
      および和声短音階上には2個、旋律短音階上には3個の「長7の和音」が存在する。


    [ N. B. ]

         「長7の和音」の検証分析:

           

             譜例 161.

                   2段と3段目

             譜例 185.

                   3段目

             譜例 190.

                   3段目

             譜例 206.

                   1段目

             譜例 207.

                   2段目



    導音和音
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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:42 | 2. 全音階による原和音 | Comments(0)
2017年 03月 05日
3. 導音和音の7の和音化 / 和声学:調和声
導音和音の7の和音化



  3. 導音和音の7の和音化 p.314


    譜例

    161.

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        第1段落:
          導音和音(3度構成3音和音)を用いた -非7の和音化による
          段落和音は第5音省略_「構成音の省略」 p.158

        第2段落:
          導音和音の7の和音化による
          反進行の並進行(連続)5度

    Direction) 導音和音の7の和音は(___)で示してある。


    162.
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        この領域には3種の4音和音化されたすべての和音が検証できる。
        C は変ロ音

    p.316

     3度構成3音和音の導音和音には、・・・・・


    導音和音:導音を含む和音
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    導音和音の7の和音化
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       和音の比較

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    *属7の和音および導7の和音の用語は、・・・・・


    各音度上における7の和音  p.317
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    7の和音の導音カデンツ p.318


     導音和音に7の和音を用いた導音カデンツには、・・・・・

 多くの学習者にとって、第7音進行は一元的という理解で止まってしまう傾向がある。古典音楽を聴いているとこの第7音が様々な方向をもって進んでいることに気がつく。たとえば、第7音進行は長短2度下行という進行方向のほかに複数の進行があることを知っている人はあまりいないのではないだろうか。しかし第7音進行の長2度上行と完全4度下行は、古典和声にとってはきわめて通常的なものである。
 言うまでもないが、ここに示した「7の和音の第7音処理(長短2度下行)によるカデンツ構造」は古典和声のなかに展開するひとつの例にすぎない。各譜例(161.〜181.)や演習に示された構造性は、主に分かりやすいコラール和声の例を引用してある。


    a. 属7導音カデンツ
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    b. 導7導音カデンツ


    c. 減7導音カデンツ p.319


    第7音処理 _2度下行


     各音度上の7の和音の第7音は、・・・・・



◇     ◇     ◇



和声空間自由化の試み

 現代の実証的研究の検証分析データによれば、「属7の和音のあり方」は、ただ単に一元的で類推的な性質だけをもつのではなく、明らかに、「第7音進行_長短2度下行・長2度上行・完全4度下行、そして、_第7音重複を含む和音構成」の諸現象によって成り立つ事象であった。 要するに、このような象徴機能そのものが、300 年前のバロック音楽にも存在したという事実が確認できる。

    [ N. B. ] 
 
         1) _長短2度下行_事象におけるひとつの現象

      基本和声現象の多様における統一

          J.S.バッハの作品において、次の時代の音楽と比較して例は少ないが実際に
           機能している第7音進行

               
         2) _長2度上行  

 和声の可能性は、きわめて基本的な進行が様々に組み合わされて、実に多様な事象をつくり出すことではないだろうか。第7音進行が長2度上行の現象をもつということは、日本人の場合、古典派和声_ベートーヴェンの音楽を聴いて初めて知る現象であろう。しかし、それ以前のバロック音楽においても実在する和声現象である。

            (Chorale_Von Gott will ich nicht lassen)
            (BWV 244 Matthäus-Passion_39, Aria) 冒頭部分
            (BWV 232 Messe_Osana, in excelsis) 中間部分

         3) _完全4度下行(完全5度上行)
 
 第7音進行には完全4度下行の現象もある。ただ単にそれだけでなくその転回音程_完全5度上行も存在する。この現象は古典和声の事象では一般的なものである。さらには第7音重複の表出もあらわれる。バッハが思考する和声においては和声空間の自由化を試みるという可能性への発想があり、「より開放的で柔軟な和声」すなわち「古典派の和声」につながっている。和声学での演習能力向上の秘訣は、このような基本現象の多様な用法を修得することであろう。

            (BWV 244 Matthäus-Passion_68. Chorus) 冒頭部分
            (BWV 1047 Brandenburgische Konzerte Konzert Ⅱ)冒頭部分
 
            (BWV 829 Partita Ⅴ Praeambulum)中間部分
            (BWV 806 Englische Suiten Ⅰ Sarabande)冒頭部分
            (BWV 809 Englische Suiten Ⅳ Prelude)中間部分
            (BWV 971 Italienisches Konzert Allegro guisto)中間部分

         4) _第7音重複

 バッハの和声において例は少ないが、古典和声における基本和声現象のひとつである。

            (BWV 244 Matthäus-Passion_67. Recitativo) 結尾部分
            (BWV 232 Messe_Symbolum Nicenum) 1. 冒頭 と 8. 結尾部分
            (BWV 1047 Brandenburgische Konzerte Konzert Ⅵ)冒頭部分

 こうして観ると、属7の和音_第7音の進行は「導音進行とその重複(次項で説明)」と同じように、さまざまな分析資料と向かい合えば、少なくとも限定されることはなく、第7音進行の多義的な形態が本質的核心を表す属性として分析されることがポイントなのである。これを簡単に示すと次のようになる。

         第7音進行 [ 複数の進行性質をもつ現象 ]

 したがって、第7音進行の等式は、 第7音進行 限定進行 であり、成立するのは次のような不等式である。

         第7音進行 > 限定進行

 つまり、「第7音進行」の現象は複数概念によって定義されるということである。
 なお、理論構成と演習のための「第7音処理_2)長2度上行、および、3)完全4度下行の動的な機能システム」については、ベートーヴェンの項(下巻)で検証する。


◇     ◇     ◇


 では、演習に入ろう。

    理論演習
 
    演習1 p.319
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    演習2

    1)
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    2)
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    演習3

    1)
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    2)
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    鍵盤演習

    演習1 p.321

    1)
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    2)
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    3) p.322


声体数変換


2・3・4・5 声体
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    D) 楽曲の進行に伴い「段落の和声構造」は、3〜4〜5 声体と変化していく。



◇     ◇     ◇



    Supplementary analysis)

    D1) 1) のコラールにおける古典的な機能システム_「第3音重複」「並進行(連続)5度」およ
       び[カデンツ番号」の分析にもとづく説明をしておこう。
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第3音重複

 和音構成音の重複には、根音、第3音、第5音によるものがある。その重複というのは、そうした音響的ヴァリエーションをも包括するような意味での和音のあり方、つまり和音をもとにした素材のあり方と考えればよい。言い換えれば、どの重複も有用な状態で私たちの眼前に存在しているということである。
 このように、それぞれの重複が本来的素材として検証される実在の分析結果の意味が実体なのだとすると、一方的に自己充足的な正誤判断をして、そのなかの第3音重複だけを忌避する規則の意味はどのようなことになるのだろうか。検証分析に消極的な姿勢を示す規則主義者はそれにはまったく触れていない。しかし、その和音素材がもつあり方が伝統的に継承され緊密に連動している古典和声の世界を場にして実践される第3音重複、そこで重複される「実践的実在」の意味が「実体概念」ということになるであろうことは容易に理解できる。

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            「 和声法 - 構成音の重複:」 p.156
 
                 b. 第3音重複

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並進行(連続)5度

 加えて、このコラールにも、他と同様に「並進行(連続)5度」というバッハは否定しなかったありふれた現象が分析できる。そもそも、この現象の生成の方法と、それを和声として生成する「伝統的な存在了解」とが密接に連動しているために、禁則的なマニュアル化が不可能なのはすでに明らかであろう。つまり、並進行(連続)5度という一般的な機能システムは古典和声の再生において無視できないからである。
 和音を自由に駆使できる基本的な技術、しかも響きに対する確かな耳を養うためにも、和声学の基礎的な学習環境においては、このような現象を科学的な認識もなく情動的な文言で排除しないことが必要である。

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            「 和声法 - 声部進行:」 p.159

                 声部進行_c. 並進行 p.161
                      低音外並進行5度 譜例 105.

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    [ N. B. ]

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            「 和声法 - 段落・終止法:」 p.89

                 3) 和声的傾向 p.93

                      段落: p.94
 
                      Aeolian  
                        Cadence number / 1,4,3,7,6

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    D2) 段落和声におけるカデンツ番号を答えなさい。


    [ N. B. ]

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            「 和声法 - 原和音と変化和音:」 p.69
 
                 c. 和音性質変化による変化音 p.71

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    D3) 第1段落に続く、対斜を伴う和音進行 [ D →A♭/C ] を聴き、その有効
       な古典的実在の実体概念と本来的な一般原理を保存しよう。

    D4)  下記の楽曲における対斜を指摘しなさい。
 
         対斜:

            モンテヴェルディ

                 譜例 55. p. 89  
                    75. p.109
                    93. p.154
                    158. p.297

            J.S.バッハ
                 譜例 165. p.324  
                    166.  
                    185. p.349
                    188. p.357

    D5) p.358~359 例1の対斜を調べその部分を聴きなさい。

    D6) コラール_Mit Fried und Freud' fahr' ich dahin の
                  対斜による和声法を楽譜で調べる。


    [ N. B. ]

          古典的な輪郭をもち機能理論の基礎となる 18 世紀バロックおよび古典派・ロマン
         派和声様式の「多元的構造特性」、その検証データのひとつ、導音進行の「象徴的概
         念」は、後続項_p.329 ~345に詳しい説明がある。




◇     ◇     ◇




    演習2 p.323

    属7導音カデンツ

    1)
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    2)
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    減7導音カデンツ

    1)
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    2)

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    D) 低音旋律の音程特性に注目。





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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:40 | 3. 導音和音の7の和音化 | Comments(0)
2017年 03月 05日
4. 経過導音カデンツ / 和声学:調和声
経過導音カデンツ



  4. 経過導音カデンツ p.324 (link-p.89, p.97)


    譜例

    163.
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    164.
e0025900_12531967.gif


    165.
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    166.

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    D) 165, 166. における記号  ̄ / の現象を「対斜」という。



対 斜

 異なる声部間における「斜の増1度関係」をいうが、バロック・古典派の和声様式においてはほとんど問題にならない。したがって、限定志向を意図したマニュアル化はできないのである。視覚的な楽譜上の理屈で「それは対斜と言う、言わない」をもって考えるのではなく、大作曲家の洗練された感覚を見習うなら取り立てて否定されるような和声現象ではない。つまり文化的実践として創出された実例を考察すれば、「対斜」は古典にとって不可扱いされる手法ではなく、有効な表出法であることが明らかになる。従って事例に応じた個々の響きに関わる論議はあるとしても、事実を隠し、現実体験をも排除し、その和声法を禁則という認識区分に定義づけすることは不可能なのである。むろん、西洋バロックおよび古典派和声様式に「対斜禁則の原理」は存在しない。
 資料のいくつかを示す。

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    理論演習

    演習1 p.325

    1)

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      E♭ major: ( Ⅶ゜)  ( )  →  ( ♮♮Ⅰ゜7゜)    ( )
               (1)             (2)
                
    2)
         B minor: ( -7 )  ( Ⅳ )  →  ( ) (Ⅴ) ( -7)(Ⅴ)
               (4)         (5)   (5)

    3)
         F minor: ( -7 )( )
              (6)



    演習2 p.326

    1)


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        1小節_Bass Line ( D → E♭, ♮E → F )

        ちなみに、演習1に倣って和音記号およびカデンツ番号を表記すると:


        7   →    Ⅴ
           4        5

    2)
          Ⅵ → Ⅴ Ⅰ → 7 Ⅱ
          6      1       2

    3)
         -7   → 7  → 7  →  ♮Ⅳ゜  →  7 
            4        1      5         5        1



    鍵盤演習

    演習1 p.327

    1)
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    演習2 p.328

    1)

 
      D1) 段落・終止法和声を確立する手段であった導音カデンツとその転移は、段
         落・終止点以外に用いられ、経過的導音カデンツの表出は和音進行の推進
         力を強め和声構造を多様化する。


譜例から得られる効用性


      D2) 譜例の和声分析に倣って「経過的導音カデンツの和音記号とカデンツ番号」を表記。
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      D3) 演習 a. c. における対斜構造を指摘しなさい。


    2)

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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:39 | 4. 経過導音カデンツ | Comments(0)
2017年 03月 05日
5. 導音処理の自由化 / 和声学:調和声
導音処理の自由化


相対的機能

「 導音現象 」

 和声学基礎論のなかで、次第に明らかになった概念定義の特徴に眼を移してみよう。その基本的な視点は、限定的和声観の克服という点であろう。和声に世界の現象を限定的に判断しようとする考えからの脱却である。たとえば機能和声でさえも、限定禁則の観念のなかに、機能和声の意味合いを含めていたように考えられるが、機能和声の原則が、やがて実証的研究者たちの手で実証されていく過程のなかで、その意味合いは失われている。そして、新しい方法論の確立である。現存在の検証と分析との組み合わせを図ることによって、概念定義の実証的なされ、これの意図的な利用が和声学に不可欠となった。さらに、現実的な実在性の応用という点がある。中世時代の音楽教本も、ほとんど実在学と同義語といってよかった。理論書「ムシカ・エンキリアディス」は、和声法の論説においては実在学である。したがって、ルネッサンスを経て和声学の理論体系に導入された実在学的方法が 20 世紀に飛躍的に発展し、そのすぐれた検証力と定義性のゆえに、概念規定の定義の手段としてとり込まれ、それにともなって、事実と本質についての象徴概念も、実在認識によるものが多くなった。現代では、検証と実在定義の緊密な関係は、回復されていると言ってよいだろう。

 歴史(未来)を切りひらく導音現象 かつても今もまたこれからも、絶えることなく問われているのは「歴史的・実践的実在とはどのようなものか」という問いである。そして、古代ギリシャの学問のもとで始まった「音楽論」は、たしかに「その後長い間多岐にわたって論じられはしたが」、しかし「音楽教本_ムシカ・エンキリアディスに記されたオルガヌムから近代和声学論にいたるまで、認識論的な論述を超えて、またその機能論的な論述を貫いて、和声の存在とその本質は同じものであり続けてきた」と現代の理論家はみているのである。
 西洋音楽の世界の必然的な帰結によれば、属和音_導音現象は、もともと、非均質空間をかたちづくる相対的な性質をもっていたのである、箇々の現象が相互に連関し合って機能的な全体をなしている。これはシステムと呼ばれ、属和音の目的を成し遂げるために活動能力を発揮する体系である。中世・ルネッサンスからバロック・古典派・ロマン派にいたる実在と結びつき、その検証を基本的前提定にするようになると、その原理に包括的な根本問題が示されたと考えることができよう。つまり、導音現象は古典和声を中心としたいわゆる体系化のスケールを内包する概念である。このように分析してみると、相対的な導音性質は、和声的空間と和音的素材との間に、事実を媒介として新しい視野を広げ、分析的な概念と関連して多元的な解釈を要求する概念となる。したがって、歴史的・実践的実在の「現実性」と「可能性」を捉えようとしている和声学基礎論においては、導音についての概念枠組が必要になる。
 そこで和声学は、ある特定対象の導音現象_もっと広い意味での質性という意味に認識する導音現象認識の可能性_を分析と総合によって問おうとしている。ここで、もっとも導音現象的な意味での導音現象_人間的思考活動・与えられた素質や能力・そうであり得た範囲_といわれているのは、次のような事実である。

 6種の導音進行と導音重複 導音現象は、調的基本音階の諸音(いくつかの幹音)にはじまり、派生音(臨時記号音)を経て、「6種の進行」によって構造化される。これらは必然的な実在形態である。もちろん、バロック前期(Gesualdo, Monteverdi, Kerl)の半音階法を引き継いだ バロック後期_ J.S.Bach および G.F.Handel の和声法のもとで、導音は様相を変えながらさまざまな音に向かって進んでいる。そして、重複もされる。さらに導音進行それ自体は、転移も含め基本音階音との調的関連性を離れ独立して多義的に展開し得る。とすれば、導音現象は多様と変化における相対的な機能をその本質とする。


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 和声学における概念規定とは、私たちに対して和声との関わり方を検証と分析をもって記すことである。それゆえ動的な面にスポットを当て、現象の現実的な法則を見いだし、この法則としての一般的な事実に特定対象の事実を結びつけることによって行われる。和声空間の自由化にとって、相応しい導音の属性は、人間のその場に応じて適切に変えられる意識の発展を可能にするといえよう。
 もっとも重要なことは、調和声の指標である属和音における導音現象の理解である。バロック和声の実在に基づく導音現象の象徴概念が、それ以降の和声現象の分類に用いられるだけでなく、それ以後に起きた事象現象をも説明することができるのである。古典派和声についても、近年、実在検証に依拠した段落終止和声の導音進行の検証が進み、それが限定的であるとされてきた現象とは別現象であることが明らかになった。また、そのすべてが、ロマン派和声に受け継がれているという事実も判明する。J.S.バッハの導音処理法によるこの諸現象は、理論体系の「基本的和声現象」と呼ばれ、命題の基礎となる根源的な概念を意味している。それは先行した時代が残した旋法和声(現実性)の上に、より柔軟な人間的活動(可能性)を創造していく存在、および、種類・性質・形態に広がる躍動的な和声的思考回路の基点となる存在である。「和声学基礎論」における学習の第一歩は、検証分析によって支えられた本質存在と呼ばれる、たがいに他方を切り離しては成り立たない「属和音_導音現象」を使いこなすことから始まる。

 では、つぎのページを開いてみよう。


  5. 導音処理の自由化 p.329

    (1) 段落・終止における導音処理

    a. (導音の)長3度下行

    譜例

    167.
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         第1、2、3段落における内声部の導音進行

         段落:(和声的傾向 ( p.93、p.94_段落:Mixolydian)

           第1段落_カデンツ番号:4
           第2段落_カデンツ番号:1
           第3段落_カデンツ番号:5



    168.
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         上声部の導音の進行方向に注意

           段落_カデンツ番号:4



    [ N. B. ]

         「導音進行_長3度下行」は、
         前時代のモンテヴェルディによってすでに実践されている。


             長3度下行(短6度上行):

                譜例 78. p.123 
                   82. p.137
                   93. p.154
                   129. p.235


    b. 短2度上行

    譜例

    169.
e0025900_14510152.gif
               
         段落における内声部の導音進行

           段落_カデンツ番号:1



    c. 完全・減4度上行 p.330

    譜例

    170.

         段落における内声部の導音進行

           段落_カデンツ番号:1


    譜例

    171.

         段落における内声部の導音進行

           段落_カデンツ番号:1




    (2) 経過導音和音の導音処理 p.331


    a. 長3度下行

    譜例

    172.
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         段落および終止以外の箇所に表出された導音和音の導音処理

           カデンツ番号:6



    b. 短2度上行

    譜例

    173.
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           カデンツ番号:3
           カデンツ番号:5( p.323_減7導音カデンツ


    Direction) *カデンツ5* には並進行(連続)5度は検証事実である。耳で確かめておこう。


    c. 完全・減4度上行

    譜例

    174.
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           カデンツ番号:7

    譜例

    175.
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           導音進行_減4度上行(G♯→C)、短2度上行(D♯→E, G♯→A)


    d. 長2度下行 p.332

    譜例

    176.
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        段落の先行和音におけるベース・ライン に注目しスローモーションで聴くと、短3
       度→短2度→完全1度音程)。この非和声音修飾の和声法は後の和声作成で適宜応用
       するとよい。p.326 譜例 2) の内声部(インナー・ライン)による同じ響きがある。


    譜例

    177.


           段落の導音和音には、先取音(F♯)が用いられている。


    D) 譜例 176、177 の和声全体を和音分析し、終止形の個数、その種類 (p.93) を
        答えなさい。


    e. 長2度上行

    譜例

    178.
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            和音の種類は異なるが構成音は同じ:

            (先行和音)                  (後続和音)
             属7の和音_導音   →「長2度上行」→   属和音_導音

           A minor:
7              Ⅴ


    f. 増1度下行

    譜例

    179.
e0025900_08264773.gif
            和音の種類は同じでも構成音が異なる:

            (先行和音)                  (後続和音)
             属7の和音_導音   →「増1度下行」→   属7の和音_第7音

           A minor:
7               Ⅴ7


    (3) 導音重複 p.333

           < 重複した導音を順次的に反行させた表出 >

    譜例

    180.
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    譜例

    181.


    D1) 譜例 180. 181.の導音重複と導音進行の方向性を考察しなさい。
    D2) 導音重複和音の後続和音はそれぞれ何度の和音かを分析しなさい。
    D3) つぎの単元に掲載された例であるが、譜例 185. における導音重複に注目。


 もう一度「導音現象」についてのコンセプトを確認しておこう。
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検証される導音現象


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            「 和声法 - 導音処理の自由化:」 p.329

                 <導音進行 _ 長3度下行>      
                         譜例 167. 168. 172. 182. 184. 186.

                 <     _ 短2度上行>      
                           169. 173. 183. 190. 192.1

                 <     _ 完全4度・減4度上行> 
                           170. 171.174. 175. 205.

                 <     _ 長2度下行>      
                           176. 177. 191. 204.

                 <     _ 長2度上行>      
                           178. 187. 188.

                 <     _ 増1度下行>      
                           179. 189. 208.

                 <導音重複>             
                           180. 185.
                           p.377( Nun lob’,
mein’ Seel’, den Herren )

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 古典和声における諸現象を説明するためには一面的なアプローチだけでは不十分である。なぜなら、現象の存在形態は時代・作曲家・作品・部分によって違いがあるからである。こういった場合にはその存在形態に対して様々な視点をとり、実際の歴史的・実践的存在を比較検討する必要が出てくる。和声の一般原理の分析と総合によれば、西洋古典和声における人間の本能的・民族的・即興的な思索の集積として存在する「並進行(連続)5・8度」と同じように、「導音進行は、その重複による進行を含め限定・制約されるものではなかったことが検証される」。
 バロック様式および古典派様式の和声では、多種多様な導音進行が「和声空間の自由化」という広範囲で多様な知的活動の成果として現実的・具体的に実践されている。とくにJ.S.バッハの4声体書法(コラール)による声楽的な作品からは「6種の導音進行」が検証される。この「多元的な導音進行の象徴概念の内包」すなわち私たちの音楽観を形成する「伝統的な共通認識に依拠した導音現象の属性」は、いうまでもなく、同時代そして次の時代の作曲家を介して後の時代に継承されていくのである。




    理論演習 演習1 p.334

    1)
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    [ N. B. 1 ]
        導音和音:導7の和音を用いた表出は、2)の中間部にもみられる

    [ N. B. 2 ]
        終止和声は A dorian: を用いたドリアン・カデンツ構造



    理論演習 演習2 p.337

    1) 導音進行_長2度上行、終止は長3度下行
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    2)     _導音重複で反行、終止は短2度上行
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    3)     _短2度上行を3度繰り返し、終止は長3度下行
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    4)     _短2度上行、長3度下行、終止は完全4度上行
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    5)     _短2度上行を3度繰り返し、終止は長3度下行
    6)     _超2度下行、短2度上行、終止は短2度上行
    7)     _増1度下行、短2度上行を2度繰り返し、終止は長3度下行


    理論演習 演習3 p.338

    長3度下行

    短2度上行 p.339

    完全4度上行 p.340

    短2度下行



    

      Supplementary practice)

         p.328 _ 1)2) の旋律を課題にして


       1) 
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       2) 

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    鍵盤演習 演習1 p.341

    鍵盤演習 演習2 p.344

    1)
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    2)
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    3) p.345
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    4)

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    D) ちなみに、譜例 180. 前半には、Ⅵ → 対照的な根音進行2度上行_「Ⅲ → 」 の現象が現われる。



「 Ⅲ および の和音 」

 本来、近代機能和声学にせよ、検証的統計学を含めた他の和声学にせよ、それらはルール規定に惑わされない歴史的・実践的実在自体が研究の主役であった。したがって、現象の間の「関係」と「機能」とに焦点を合わせ、和声的要素と和音連結の様相こそ実証的研究の対象となる必要がある、という基本的諒解の上に立つ。バロック-古典和声の事実に基づく分析をふまえれば、長調においておよび短調における の和音は、 当然、恒常的にひとつの機能的な和声構成和音として用いられた。

    D) 譜例 176. , 180. の和声において 「 Ⅲ 」の和音の存在を確かめなさい。

        その和音を課題 4) の3小節目に用いる。

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    [ N. B. ]

            : 譜例 190. 191. 
            : 譜例 171. 178.  p.334 演習1_1) 参照



    _では、演習2 に戻ろう。


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     5)

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    D1) 上記 5) の和声は、p.339 演習3_3) (Das walt' mein Gott, Vater,
         Sohn) などの和音進行に準じている。

    D2) 課題 3) 4) と同様、この課題も、他の方法で表出してみよう。

       まず最初に、たとえば、伝統的な旋法和声の技法 「Cantus mollis(変ロ音化) 」のような和声的要素
       を表出。

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          つぎは、前出の、p.338 演習 2_7)_(Herr, ich habe missgehandelt) の和音進行に倣って、

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         そして、譜例 178. の導音進行_長2度上行の技法を試みる。

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 ところで、和声現象の外苑と内包という概念の両側面は認識の発展によって変化し、具体的・現実的に統一される思惟と存在によっても様々であり、それらは相携えて進化していくものである。和声学は、古典音楽の本来的実体である導音進行の現象間の関係と機能とに焦点を合わせ、ダイナミックな性質こそ検証分析の対象となる、という基本的諒解の上に立つ。この点で機能理論と深い連関がある。当然この導音現象の諸性質と結びついて初めてその理論的機能的基盤をつくりあげ、私たちのもつ合理的経験とその知識の体系的構造を明らかにすることができる。
 最後に、古典和声において恒常的な導音進行の典型例_長3度下行、そして有効な導音進行_減4度上行および長2度下行現象を再現してみよう。

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「 導音現象のシステム分析 」

 客観的実在性の解明 和声学の理論と演習の基本的な問題は、実在認識の可能性をめぐり、事実と思弁との区別を明確化しようとしない基本的基準、限定の規定に固執し現実的に理解可能な意味提供を失ったルール、古典音楽の世界観を放棄する混乱とそれに対する旧態依然とした関わりから生じるのであって、それゆえ、様々な認識方法で私たちの日常体験と関連づけ命題や概念定義の内実を明らかにすれば解消される。

      「導音現象の機能システム」に関する事象の3分類:

               (1) 段落終止における導音処理

                   譜例 169. 168. 169.170. 171.・・・

               (2) 経過導音和音の導音処理

                   譜例 172. 173. 174. 175. 176. 178. 179. ・・・
                   例1 p.358~359  ・・・

               (3) 導音重複

                   譜例 180. 181. 185. ・・・
                   演習2_2) p.337 

 本質的なパラメータ 和声学は古典音楽との往来を拒絶する必要はない。機能論的思考を重視する現代の和声学は実証的姿勢がその背後にある。その総合とは、限局なものからの構成ではなく、直接的な検証の結果と新たな事実から得られる事象現象の全体像であるといえる。実在するプログラム可能なその機能システムはどれもが自然で音楽的なシステムであり、旋律および和声としての質性を十分に備えていることが分かる。
 導音現象の相対的な性質は、音楽学・演奏学・和声学の専門的な知識としていずれにも向いている認識基準である。その概念は古典音楽の導音の諸現象と合致するため、音楽評論家や音楽評論家そして作曲家にとっても、楽曲分析において実在と疑似の区分の「判断基準」に加え、分析的で合理的な「パラメータ」であることは間違いない。音楽史的に、次世代の_ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ロマン派_ショパン、シューマン、ブラームスは、これらの相対的機能を保持した表出法を継承している。和声学的な知の構築過程において、歴史および実践に関わる本質的実体を理解すれば、現実的な意味と有用性への感覚を呼び覚まし、古典音楽が聴こえるはずの時空で理論と演習を再考することができる。




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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:38 | 5. 導音処理の自由化 | Comments(0)
2017年 03月 05日
6. 第2転回形和音を用いた導音カデンツ / 和声学:調和声
第2転回形和音を用いた導音カデンツ



  6. 第2転回形和音を用いた導音カデンツ p.346

    譜例

    182.
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Bass Line の方向性に対する均整のとれたバランス感覚


    D1)  この構造は、低音旋律の音価を拡大して、理論演習 演習_1)に設定してある。

    183.
         six four chord にからめた音_G A Bb 、その G のタイミングに注目

    D2)  理論演習 演習_3) に応用しなさい。

    184.
         「次世代のモーツァルトが常套句としたイデオム」を彷佛させる 

                  下巻 古典派の和声_2. 旋律と和声の定型_p.32

    D3)  譜例の 通奏低音法 数字付和音記号 の表記に注意(音程・和音表記_p.16) 。


    理論演習 演習 p.347

    1)
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    2)
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    3)

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    D) 3)の減5度から完全5度への並進行(連続)5度は、Brandenburgische Konzert 5 に
      おいて検証される現象。


    鍵盤演習

    演習1

    1)
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    2)
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    3) p.348
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    D) rough sketch における段落・終止和声の構造は、Matthäus-Passion_57. Aria の分
      析資料によるものである。



    演習2


    D) 譜例 180. の終止和声との現象と構成の違いを比較しなさい。




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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:32 | 6. 第2転回形和音を用いた導音カデンツ | Comments(0)
2017年 03月 05日
7. 複導音カデンツ / 和声学:調和声
複導音カデンツ


  7. 複導音カデンツ

    p.349

    譜例

    185.

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       新しい段落・終止和声の構造特性:

            複/導音カデンツ
              ‖
          2連式の導音カデンツ



    [ N. B. 1 ]

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            「 和声法 - 対斜:」

                 2段目_4小節

                     C → E

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    [ N. B. 2 ]

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            「 和声法 - 根音進行(和音進行):」 p.137

                 3段目_1小節 
  
                   和音進行:  7 → Ⅱ → 

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    [ N. B. 3 ]

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            「 和声法 - 導音重複:」 p.333

                 3段目_4小節

                 導音重複:2つの導音は別々の進行をする
                         [ p.333, p.337_2) 参照]

                    ・導音進行_完全5度下行(アルト)
                         一方は、短2度上行(テノール)

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 段落・終止において、導音カデンツを連続させる和声がみられる。その連続和声は、・・・・・

    p.350
    導音カデンツ
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    複導音カデンツ

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    例

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    導音カデンツの根音進行


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    理論演習 演習1 p.351

    例
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    1)
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    2)
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    3)

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    鍵盤演習

    演習1 p.352

    1)
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    2)


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         p.351 理論演習2_3) と同じ和声構造

    演習2

    例
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    1)
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    p.353

    2)
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    3)


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    演習3

    1)

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    p.354

    2)
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    3)

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# by cantus-durus | 2017-03-05 11:29 | 7. 複導音カデンツ | Comments(0)